#41:DAHON Mu SL 改 ’ '06(キトチンさん1号車)


GIANT OCRで参加されていたキトチンさん、ちょっと趣向を変えて折り畳み小径車へチェンジ!
何が良いか、ご相談を受けてましたが・・・某オークションでゲットされたのが、これ。

特異な弓形のフレームが、近代的な感じですね(でも、コイツが曲者でして・・・)。
まずは、改良前の状態から、紹介して行きましょう。


06年から供給開始した、次世代DAHONを象徴するフレーム・・・って書いてあった覚えが。
カタログ重量:9.2kgで、「HERIOS SL」に近い軽量なバイクです。

オリジナルから、シートポストとサドル、ブレーキ・レバー等が変更されている様です。
当時のカタログだと、ホイールは07「HERIOS SL」の様な、薄いブルーグレーなんですが、
全体の雰囲気からすると、この方が良いですね!


駆動系:まずは変速機は・・・。

シフターは、「SRAM」社の「X7 8SPD」。Rディレーラーは、同社の「X7」。
ブレーキレバーは、オリジナル(「Avid」社の「 FR5」)から、「シマノ」社の「Deore」へ、
オーナー自身が、入手後、変更されたそうです。

ですが、これ、ちょっとマズいです・・・ブレーキがミニVですので、レバー比の関係から、
効き過ぎます!まぁ、絶対危ないレベルでは無いですが、微妙なコントロール域が小さいです。


駆動系2:リアカセットとクランク。

リアカセットは・・・メーカー名、不明です。11−32T 8速。

クランクは「Truvativ」社の「Elita」で、歯数は52T。
ISIS規格の「American Classic」社のBB(凄く軽量!)を採用してます。

ここで、フロントW化の可能性ですが・・・
クランク後方奥のメインフレームを補強する部分が邪魔をして、Fディレーラーが付きません!!


ブレーキ系。

「Kinetix」社のミニVブレーキ「ProStop」。
07「HERIOS SL」と同じ物です。舟式のシューだし、調整もしやすくなかなか良いです。
(オリジナルの状態だと、ちょっと軸の潤滑が良くないので、要注油ですが)


ホイール。

フロントは「Pantour」社の「suspension」ハブ。
これ、ちょっと、厄介な代物で・・・構造上、左右にガタが有ります(私の07「HERIOS SL」も)。
リアは「American Classic」社のハブ。(写真は、改良後を参照下さい)

リムは「Kinetix」社の「Kinetix Pro」。ダブルウォールのエアロリム。
ニップルがリムの内側(タイヤの付く側)なので、専用工具が必要。
エアロリムにしては、言う事を聞くリムなので、振れ取りは楽です。


タイヤとサドル関係。

タイヤは「Schwalbe」社の「Stelvio Dahon Special Edition」
サイズは、20×1-1/8(etoro 28-406)で、85〜120PSIで使用します。

シートポストは、ノンオリジナル。DAHON純正のカーボン品に、変更されてます。
サドルもノンオリジナルで、「fizi:k(フィジーク)」社の「アリオネ」。
(オリジナルは「SDG」社の「I-Beam Pro」のポストに同社の「BelAir SL I-Beam」)


<改良:1 2008/05/30>

早速、より快適を目指して改良を・・・と言う事で、相談を受けて。
ドロップ化も話に出ましたが、特殊なステムの為、まずはフラット・バーで10速化の改良へ。
部品が揃ったところで「ちゃりき!工房」へ持ち込まれました。

実は今回、特異なフレームの為、かなり難航いたしました・・・(汗)
私としては、完璧な状態でなく不完全燃焼気味ですが、オーナーには喜んでいただいたみたいです。

完成後の姿です。

写真では、大きな変更が無い様に見えます。
が、長過ぎるワイヤー類を適正に調整して、
すっきりしてるのが、分かりますか?

完成後の重量は、9.7kg。
採用した部品からすれば、軽量になるはずが、
あら?・・・500g増えてます!

これは、多分カタログ値は、ペダルレスかと。


ハンドル回りです。

ハンドルは、オーナーさんが御自身で、カーボンの物に変更。

10速化に際して、シフターは「シマノ」社の「SL-R770」を採用。
現在、フラット・バー用で10速は、これしかないですが、質感も良く良いです。
ロード用のシフターですので「トリム操作機構」も搭載されてます。
Muのフレームは、形状的にフロントW化しにくい(出来ない?)ので、必要無いですが。


改良後の駆動系

Rディレーラーは「シマノ」社の「DURA-ACE」(RD-7800-SS)。

リアカセットは「シマノ」社の「ULTEGRA]」(CS-6600)の11〜23T。
実は、ここにも落とし穴が有って・・・「American Classic」社のハブのリアカセット取り付けの
セレーションの精度が良くない!!!
ギアが中心にセット出来ないので、0.2mmの真鍮板を切って入れて、中心を確保しました。

ところで・・・『え?フロントW化しないで、登坂を考えると、小さ過ぎない?』と思われた方、
本当はそれで、正解!・・・ですが、これには理由が有って・・・。


現物を確認しないで、10速化を決めたのですが・・・。
オリジナルの8速の状態で、チェーンがフレームに当たって削れてました!

登坂能力を考えて、12−27Tをオーナーに手配願った(何故か12−25Tでしたが)のです。
いくら10速のチェーンが細いとは言っても、11Tから12Tになれば、当たってしまいます!
かといって、11−23Tと12−25Tをミックスして使うのは、変速用の歯の切り欠き位置が
違って来て、まともに変速しません!!!

フロントのギア板を52T→50T化すれば、かなり余裕が出来ますが、
それでは、登坂能力は稼げても、高速性能が・・・。

そこで、施したのが、

1:BBの右サイドに入っている2mmのスペーサーを左側に移設。

クランクを外して、軸長を測ったところ、108mm。これ以上、短い物は無い!
で、仕方なく、BBの右サイドに入っている2mmのスペーサーを左側に移設を考えました。
厳密に言えば、クランクが左に寄ってしまいますが、まず、体感出来ないレベル。

ですが、前オーナーがかなり弄った様で、「American Classic」社のBBはアルミ製で、
うちの工具では対応不可・・・オーナーさんにSHOPさんで、行ってもらいました。

2:フロントのギア板は、オフセットして歯が付いているので、表裏入れ替え。

以上で、左の写真の様に、何とかクリアランスを確保(チェーンの踊りを考えると、まだ不十分)。

と言った具合の仕上がり・・・フレームの特異性とは言え、ちょっと不完全燃焼気味です。


<改良:2 2008/06/21>

前回の改良の際、私のドロップ化した「Herios SL」を見せたのが良くなかったのか・・・(笑)。
その日のうちに、ドロップ化の手配をしてしまったそうです。

どうでしょ?良い感じに仕上がってません?

ドロップ化に際して、オリジナルの
ハンドル・ポストでは、特殊なクランプ形状故に
面倒なので「Mu P8」の物に変更なのですが・・・。

これが、メーカー欠品!
ですが・・・何故か出て来ました(笑)

変更点、及び、採用パーツは・・・。

ハンドル・ポストは、多分、’07モデルの物・・・実はこれ「Herios SL」をドロップ化するのに、
「小牧市」の「じてんしゃひろば 遊」に手配していた物。タイガーさん宅に有りました(笑)。
ステム内径を、25.4mm→26mmへ、加工してドロップハンドルに対応させてます。

ハンドルは「TNI」社の「ビクトリーバー」・・・ハンドルエンドに、穴開け加工有りの軽量な物。
ブレーキの引き代調整の為に、補助ブレーキレバー(「テクトロ」社の物)を採用。
バーテープは、サドルに合わせて「fizi:k(フィジーク)」社の物。当然、色も合ってます。
STIは、「シマノ」社の「105(ST-5600)」。他の10速同様、握りやすく動きも良いですよ!

これで、ハンドル部分の折り畳みが面倒になったので・・・
「ちゃりき!縫製部」の「猫袋」も採用、何時でも、輪行行けますね!


<改良:3 2009/10/02>

この年式独自の問題点、フレームにチェーンが干渉するのを避ける為に、BBのスペーサーを
左に移しBBを右に寄せたのが原因か、フロント/アウター+リア/トップ時に、
チェーン落ちが発生していました。

今回、それを避ける意味でも、フロントのW化を実施しました。

完成後の姿です。

有るべき物が、ちゃんと付いた・・・そんな感じです。
特異なフレームですが、戦闘力有りそうに見えるでしょ?

この06年式だけなのか不明ですが、この年の「Mu」はフレームとチェーンのクリアランスが無く、
他のモデルより短い108mm(通常のWギアの設定)のBBを使用してました。

そして、オリジナル状態で、フロントWのインナーの位置にギア板が付いた状態で、
フレームとチェーンのクリアランスが無いので、当然、W化したら当たる訳です。

かと言って、BB軸長が108mmですので、普通では、これ以上中に入れる訳にも行かないです。
BBシェル端面をフェイスカットで、削り込んで左側に寄せると、メインフレームを支える部分に
Fディレーラーが当たってしまいます。(左右でペダル位置が違ってしまいますし、ね。)

と言う訳で、フロントW化は、諦めてもらっていたのですが・・・。


加工したリア周りと、ワイヤー配索。

私の製作ポリシーでは『フレームには手は加えない』なのですが、今回だけは手が無いので特別。

チェーンの当たる部分を、叩いて凹ませた後、肉厚の許す(だろう)限り削ってます。(写真:左)
鏡面仕上げにしてあるのは、傷が有ると、そこに応力が発生して、クラックの要因になるから。
今後、もしもクラックが発生した場合は、大きく切開して逃げた形で溶接加工です。

ワイヤー配索は、スタンドの部分に2mmのステンレス板を入れて行ってます。(写真:右)
上手い具合に、フレームとの隙間に押し込める事が出来ました。


Fディレーラー周り。

上記フレーム加工で、チェーン・ラインに余裕が出来たので、ステーを新設計/製作。
今回、実車を預けて貰ったので、実車合わせで、ギリギリの設計が出来ました。

市販されている「Mu」用ステーを使わなかったのは、フレームマウント位置が低く、
ステー長が長くなってのたわむ感触が心配だったのです。
また、フレーム側のワイヤー・ガイドを避ける設計なので、ディレーラーの後傾度が大きく、
この個体のフレームでは、チェーンが暴れた場合のディレーラーへの接触も有りそうでした。

これらを嫌って、潔くアウター受けを切除し、出来る限り上方に設定しました。

通常のWギアのBBなので、ステーのサイド方向設定は、前回改良した私の「Herios」と同じ。
つまり、現在主流の軸一体型のクランクへの交換も、対応できますね!


ハンドル周り。

やっとブレーキだけの仕事しかして無かった
左STIに変速の仕事が与えられました(笑)。

ワイヤーアジャスターとして、「jagwire」社の
「ロケットアジャスターキット」を使用。
(私の「シンテシ」に使用していた物)

これは、今後、新しい物に交換かなぁ?
(現在の物は、もっとカッコいいのです!)


試走を終えて。

フレームに手を加えない理由は、もしオーナーの手を離れて、新オーナーが加工を知らないで使用して、
問題が発生した場合に、それこそ、手の打ち様が無くなるからです。

自転車屋さんに持って行って『フレーム溶接して』と言っても、そうそうアルミ溶接の設備を
持ったショップさんも少ないでしょうし、オリジナルの塗装を痛めてしまいますし・・・。
となると、クラックの入った時点で『廃車』・・・それはあまりにバイクが可哀想でしょ?

で、テスト走行した感じは、設計通り、気持ち良く変速します(当然ですけど 笑)。
これで、登坂性能が与えられたので、今以上に楽しいポタに行けますね!

<警告!>
今回は、特に強く言います・・・だから「警告」です!

このフレーム改造は、絶対真似しないで下さい!!
フレームの切削加工の安全性は、この個体でも保証出来ていません。
そして、クラックが入ったまま使用していると、重大な事故になります!!!
もし、真似されてクラックや事故が発生しても、当方は、責任を取りません。